大衆食堂 横丁

2002年6月23日 祝 開店5周年


ここも見てね カツカレー


不景気のなかでも、
生きていかなくてはならない。
よい立地ではなかったが、開店。

さいたま市中央区新中里5-22-12
土曜休 夜のみ


横丁、あやしき外観。

すぐ近くに移転、営業しているそうです。
新住所 さいたま市中央区新中里5-24-6


2007年4月末で閉店しました。
ブログに閉店の記事があります。
2007/05/08「さいたま市与野の〔大衆食堂 横丁〕閉店」……クリック地獄

(05年6月21日追記)


先日、ひさしぶりに横丁へ行った。もしかすると1年ぶりぐらいか? その間に、今年に入ってからおばさんが高血圧で倒れ、2ヵ月ぐらい店を閉めていたのだそうだ。まだ本調子ではないようだが、とにかく酒は一滴も飲まなくなった。

オヤジは元気だけど、壁に無造作に貼ってあるメニューを見ると、以前より少なくなっていた。むかしのように若くはないし、自分の調子にあわせて続けてほしい。この貧乏くさい食堂がなくなるとサミシイから。

フキのきんぴらがうまかった。


大衆食堂 横丁はアヤシイのに、
生ビールが、なぜうまいのか。

<大衆食堂 横丁>は、近くにあった<大衆食堂 泉や>が与野駅前再開発事業で消えたあと、そこで働いていたご夫婦が始めた。1997年のことだ。それが、駅からは10分ばかりの、大通りから入った、あまりよい立地とはいえないところ。しばらく空いていたスナックと和装小物店のあとを居ぬきで借りて、そのまま食堂にするという大胆をした。当時、おれは、このすぐ近くに住んでいた。

いかにもスナック風のドアに、堂々と大衆食堂の暖簾を下げている。この「怪しい雰囲気」につられてか、臆せず、ふらふら入ると、いいメシと出会いがある。だからだろう、大不況のなか無事に、2002年6月、開店5周年を迎えた。めでたし。

横丁のなか。あやしき混在。
ところで、ここの生ビールはうまくて評判なのである。なぜうまいのか。それは、この写真に生ビールサーバーが写っていますね。このサーバーの中を、ご主人がよく清掃し手入れしているからなんですよ。カスやなんかを、いつもきれいにとりのぞいておかなくては、うまい生ビールにならんわけですよ。

その見事さは、メンテナンスにまわってくるビールメーカーのサービスのひとも絶賛しているほど。であるからして、キメのこまかい味わいが楽しめるのです。つまり、麦でつくった「ジュース」という感じがあるのです。

えらいなあ、われらがご主人。カアチャンもえらいけど、やっぱりトウチャンの力がなくてはなあ。

大衆食堂は、このように、見た目より、みえないところで気配りの優れている店が多い。見た目はカネでかたがつくけど、みえないところは、人間の問題ですね。では、みなさん、横丁の生ビールをがんがん飲んでください。

おれは貧乏で「質より量」なのであります。ごらんのとおり、びんビールなんですね。でも横丁で飲むびんビールはうまい。もちろん、ときどき、ふところの計算をしながら生ビールも飲みます。

いいじゃないですか、大衆食堂で気どることはないんですよ、それぞれが勝手にやればいいんですよ。

おれは、ここ、このただのオウチの座敷みたいな一角に座ると、まず「芋サラダにビール」だ。そして、しみじみ、大衆食堂はいいなあ、と思うのである。


さらにまた厚切りロースハムの
ハムカツについて


ハムカツといえば、1960年代の大衆食堂の定番メニューだった。それがいつのまにか姿を消していった。

96年だったか、おれは『散歩の達人』という雑誌に「ただいまハムカツを捜査中」とか書いたのだが、文化放送の朝の番組から電話があって、一緒にハムカツのある食堂を探すハメになったほどだ。しかし、都内ではなかなかみつからなくて苦労した。

で、そのとき発見したのが、渋谷の百軒店にある<鳥かつ>という店である。

ここはもう、なんといいますか、70歳ちょいすぎぐらいのオバサンだったと思うが、何十年間も、こりにこっていて、むかしの「プレスハム」といった、ややチクロ(チクロは、缶詰やハムなどの加工食品に使われていたが、1970年ごろ有害が指摘されて使われなくなった)的赤みのあるハムを、厚さキッチリ、4ミリに切ったのを肉屋から仕入れて揚げていた。食べてみて、たかが安物のハムカツをばかにしてはいけないと、しみじみ思った。

そのころから、不況の影響もあってか、ハムカツはしだいに復権した。よく街の惣菜屋でもみかけるようになった。テレビでは、ハムカツパンのうまい店が話題になった。

このハムカツパンのうまい店は、南千住の南千住署のならびにあるパン屋のもので、テレビのバカタレントたちが騒いで有名にしたのだが、わざわざ食べに行くほどのものではない。が、ついにはセブンイレブンのパン「焼きたて直行便」にまで、ハムカツパンが登場した。

さて、それで、わが<横丁>のハムカツ絶賛である。

このハムカツは、ここ独自といっていい。ハムカツに独自もクソもあるものか、と思いたいところだが、あるのだ。あなどってはいけない。

ふつうは、先の<鳥かつ>のように、むかしのプレスハム系のものを揚げるのであるが、<横丁>はロースハムの厚切りハムカツなのである。これが、うまい。

じつは、ロースハムの厚切りを、ほどよく揚げるのはむずかしい。衣とハムが分離しやすいのである。ちょっと揚げすぎるとハムがかたくなりすぎる。かといって歯ごたえがなくては、つまらない。それが、衣とハムがキチッと密着し、キチッとハムに熱がとおってアチアチに、しかもハムがシコシコサクッでジューシーにできあがる。うーむ、トウチャンなかなかやるな、というデキである。

ま、とはいえ人間のやることだ。ときどきハムを切るときに、女のことなどを思い出してか、微妙に心がゆらぎ傾斜し、均等な厚さにならず、したがって熱のとおり加減も傾斜するということもある。そりゃ、愛嬌というものだ。いつもキッチリしていちゃ、かたくるしくていかんよ。

あっ、それで、ここのオヤジは、「大衆食堂 横丁」という呼び方、なにがなんでも「大衆」に、こだわっているのね。気に入った!


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