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4月2日現代日本料理「野菜炒め」考


小部数発行の非売品 入谷コピー文庫から

現代日本料理「野菜炒め」考


(06年7月22日)

すでにブログで紹介したが、去る5月、フリー編集者の堀内恭さんが発行する「入谷コピー文庫」から、おれの『現代日本料理「野菜炒め」考』を出していただいた。A5版、本文25ページで、400字原稿用紙に換算すると72枚という「大作」になってしまった。たかだか野菜炒めで、そんなに書いて、だが、まだ書きたいことはある。

これは、「コピー文庫」とあるとおり、ビンボー堀内さんのフトコロから拠出されたカネで製作される。パソコンで打ち出した原稿をコピーし、写真のようにちゃんとイラスト表紙もコピーだがついて、製本したものだ。発行部数は10数部と少なく、無料で堀内さんが好き勝手に配布する。あざとい商業主義出版編集貴族に負けることなく、編集者魂とビンボー魂を発揮しつづける、堀内さんに脱帽。

ということで、堀内さんの編集後記を、ここに紹介します。







●編集後記

  遠藤哲夫さんは大衆食堂のちょっと汚れた暖簾のような人である。誰でもを受け入れてくれる心ぬくい人だ。そんな気がする。初めてお会いしたときも、どこか路地裏の匂いのする人だなあと思った。初対面ながら、同じ匂いのするビンボー人では……とふと思った。あとで飯田橋大学(ビンボー飯を研究する大学)の先輩であると知った。

  通称「エンテツさん」こと遠藤哲夫さんは、昭和18年新潟県六日町(南魚沼市)に生まれている。雪積もる中で育っている。田舎の高校では登山部に所属し、大学では貧乏生活部にいたらしい。現在は味噌汁ぶっかけ飯をこよなく愛する自由文筆業をしていられる。庶民の快食を追求する「大衆食の会」代表であり、著書に『大衆食堂の研究』(三一書房)、『汁かけめし快食學』(ちくま文庫)、その他に『東京定食ブック』(交通新聞社)、『談別冊酒』(たばこ総合研究センター)などの共著がある。「気取るな!力強く飯を食え!」が遠藤さんのモットーという。

  ときどきお酒に誘っていただく。遠藤さんは実に値段が安くて、居心地がよい居酒屋を知っている。「安く思う存分呑みたい」という志が清くて、立派だと思う。二人だと、先輩の遠藤さんが1500円くらい出し、後輩の更にビンボーな私が1000円くらい出せば、二人ともホロ酔い気分で満足できる。タ暮れ帰宅帰りの人ごみの中で「じゃあ」と別れる。
  「金がないです」と手紙を書いたら、遠藤さんからインスタントラーメンに野菜を叩き込む料理を教えられ、「これで1週間はもちます」という丁寧な手紙をもらった。また豆腐、納豆、生玉子をグチャグチャにかき混ぜて飯にかけ、大葉をちょっと振りかける「ゲロ飯」(猫飯)を教えてもらって、しばらくウハウハと食べたこともあった。

  そんな遠藤さんに、この「入谷コピー文庫」用に書き下ろしてもらったのが、『野菜妙め』である。今まで「入谷コピー文庫」は本など出したことのない人にばかり書いてもらっていたので、遠藤さんに失礼かと思ったが、簡単に快く引き受けてくださった。「野菜妙め」というありふれた料理について深遠な考察をしてくださった。「雑多」で「アイマイな」料理の中に日本人の力強さを見出す……遠藤さんに脱帽したい。遠藤さんにはしつこく、次回は「マカロニサラダ」執筆をお願いしたい。ごめんなさい。

  今回も表紙デザインは元吉治さんにお願いした。いつも無理言ってすみません。また表紙のイラストは長年の友人、静岡に住む彦坂美奈子さんに頼んだ。彼女のほんわかとした絵はいつ見てもいいなあと思うし、遠藤哲夫さんの文章の「力強さとおおらかさ」にマッチするように思ったので、無理言っちゃいました。ありがとう。
 新緑の風の中、どうぞご一続下さい。  2006年5月
      故・宮川泰作曲、ザ・ピーナッツ「恋のバカンス」を聴きながら……

表紙デザイン●元吉治
表紙イラスト●彦坂美奈子
編集●堀内家内考業



補足すれば、大学の貧乏生活部とは、おれは大学に入ったけど、実家はたちまち倒産で、生活のために臨時雇用労働者(当時は、社員と同じ時間帯同じように働くが、なぜか社員ではないものを「臨時」といって待遇や雇用期間などで差別されていた)を転々とし、そのうち実家は競売にかけられ親は夜逃げ同然で東京に脱出してくるわで、大学は半ばで正雇いになれる会社があったので就職してしまった。そういうわけで、貧乏生活部に在学ということなのだね。

堀内さんとは95年ごろ都内の編集プロダクションですれちがうように初めて会って、だがお互いのビンボー臭さにピンとくるものがあったのか、それから毎回のように大衆食の会に参加いただいた。ある日、堀内さんと酒を飲みながら話していたら、彼はこの大学の後輩だということがわかった。よくよく貧乏つながりな大学であるが、この大学には、正確な名前を忘れたが、「貧乏を守る会」とかなんとかいうサークルまであって、ミニコミ紙まで出していることを、串間努・南陀楼綾繁編『ミニコミ魂』で知った。ま、大学に在籍して「貧乏を守る会」をやっていられるなんて、貧乏のなかでも余裕があるほうだろう。

それはともかく、ありていに言えば、ビンボー人で、ビンボー人であることを苦にしないワレワレの関心事は、ビンボー人でない人や、ビンボー人でありながらビンボー人を自覚してないひとや自覚したくない人たちなどのための商業主義出版にはのりにくいわけで、ワレワレはこのように清くビンボー人らしくやろう、ということなのだな。こうしてワレワレは、出版文化という元来儲からないビンボー文化を守り楽しんでいる?のだ。

そういうわけでビンボー談議になってしまったが、後記にあるように、引き続き「マカロニサラダ」を書き、最後に「サバの味噌煮」でビンボー三部作は完結するハズだ。「マカロニサラダ」は10月に出したいと堀内さんに言われたが、これが調べるのに、なかなか大変なのだ。暑い夏はビールには向いているが調べごとに向いていないし、まだ見通しが立っていない。はて、いつ完結するか。

とにかく、野菜炒めというと、あまり話題にならないが、大衆食堂の定番であり大衆食の定番ともいえるだろう。それはそれはオモシロイのだが、ここに全文紹介できないのは残念だ。せめてもくじだけでもご覧いただきたい。



本文もくじ

1962年18歳の春、上京して
初めての野菜炒め
郷里では知らなかった
キャベツ炒めをやってみる
料理は好き好きのもの
料理の原理をアレコレ考える
「焼く」と「炒める」
戦後の田舎の台所の火
油味噌と炒飯
薪と炭の現実、炒め煮
台所の火の現実と料理
NHK、『これだけは知っておきたい料理』
江原恵、『【生活のなかの料理】学』
油の普及ときんぴら
クソマジメなきんぴらと野菜炒め
日本料理と生活料理
生活料理「学」をめぐって
帝国がなくなる未来を夢見て
栄久庵憲司、『台所道具の歴史』
『日本の食生活全集』
アイマイな火と伝統の幻想
国際関係の野菜炒め
アイマイさと雑多性の野菜炒め
現代日本料理らしさ
「季節の味」の本末転倒
「おふくろの味」と「自分の味」
生きている証の「自分の味」を大切に
「日本型」と「自分の味」
最後、または野菜炒めのまとめ
最後の最後……野菜炒めと日本料理の未来のために


おしまい 表4


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