産業新潮 06年5月号 日本のよさ再発見

大衆食こそ正しい伝統
よい食文化は日常に宿る


(06年7月11日掲載)











ブログ版2006/05/02から

「産業新潮」5月号が送られてきた。「日本のよさ再発見」という通しタイトルのページに寄稿しているのだ。

メジャーな企業や団体が広告主の、どことなく「経済界もの」「財界もの」的いかがわしさが漂う、かなりマイナーな産業経済の専門誌。こういう雑誌で、「日本のよさ再発見」とくれば、たいがいキクとカタナ、フジヤマゲイシャガール式に、包丁を振りまわす板前や懐石料理や歌舞伎落語能や着物、酒とくれば焼酎を含まない日本酒というかんじになるのが定石で、送られてきた見本誌を見ても、そういう関係者がみられた。

しかし、ここに、なぜかおれなのだ。おれが、しかも、「大衆食こそ正しい伝統 よい食文化は日常に宿る」というタイトルで書いている。おおっ、こういうステージで「大衆食こそ正しい伝統」とは、あの悪賢い、庶民など金儲けの道具ぐらいにしか思っていない経営者の溜まり場である経団連の機関紙で、そういう主張をするようなものではないか。いいのか。

しかし、そういうことをそういう雑誌で書かせてくれる編集さんがいるのだなあ。ほんとうは、おれの最初の原稿のタイトルは「よい食文化は日常に宿る」だけだったのだが、校正を見たら「大衆食こそ正しい伝統」が加わっていたのだ。こういうことがあると、雑誌が有名か無名か、どういう種類の雑誌であるかに関係なく、おれは無条件降伏的に編集さんを尊敬して、一杯飲みたくなるのだな。まだ、メールのやりとりだけで、一度も会ったことはない。

それはともかく、メジャーな産業の幹部が読者であるような雑誌で、相変わらず「なにがなんでも大衆食だ!」「これこそ日本のめしだ!」「気どるな力強くめしをくえ!」の主張を展開した。

あらかじめ編集さんから、「ザ大衆食と「普通にうまい」」のような内容と文章の調子でという注文があったのだが、それだけでは書くほうとしては面白くないので、今回は、「普通にうまい」に「日常が大事」をからみ合わせながら書いてやろうと思ったのだった。

いま読んでみると、この試みは、必ずしも成功していない。書くテクニックがないのに、2000字ちょっとの原稿量に無理しすぎたようだ。ま、そのかわりといってはなんだが、「大衆食こそ正しい伝統」が、全面的に正しいかんじになっている。がははははは。

ありがとう編集のTさん。

しかし、いつかどこかで「よい食文化は日常に宿る」について、シッカリ書きたいものだ。
現代人は、日常を粗末にしすぎるようだ。経済活動全体がイベント中心型で、砂の山をつくっては崩れつくっては崩れで、それに振りまわされすぎというか……。



この号の、「21世紀インタビュー」は、冷凍食品で飛躍成長した加ト吉社長の加藤義和さん。加ト吉というと四国は香川県に本社があり、おれの故郷、新潟は南魚沼にも工場がある、大会社なのだけど、なぜか中小企業のイメージだ。そのワケが、語られていて面白い。


創刊 昭和27年(1952)
株式会社 産業新潮社
編集発行人 伊藤千恵

東京本社 中央区日本橋茅場町1-6-12
大阪本社 北区野崎町9-13

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