伊勢屋 埼玉県深谷市西島町 |
(05年4月4日掲載、4月7日版) ←この深谷の愛人が3月30日に撮影した伊勢屋食堂の写真を、「入ってみたい食堂」として掲載したのは、去る4月4日のことだったが、なんとうまいタイミングで深谷の愛人とデートする話がまとまり、4月6日に深谷へ行って伊勢屋に入ったのだ。女性とのデートだと、すぐ何をおいても行ってしまうオレ。 12時30分に深谷駅で待ち合わせ、早速伊勢屋へ。駅から10分かからない。 のれんに「だんご」の文字が染め抜かれ、入口のガラス戸には「草もち」の手書きポスター。正面右側のショーウィンドーの右半分はサンプルケースで、左半分にだんごや草もちが並んでいる。これはもしかすると、アチコチにある、餅屋や甘味喫茶の伊勢屋の系統なのか、そういえば草もちのシーズンだなあとチラチラ考え、落剥の色濃い閑散とした通りだから、昼時とはいえ客は少ないだろうと思いながら、戸を開ける。 と、おおっ、グワッとくる熱気。ガテンのにいさんたちで一杯だ。空いているテーブルが一つしかない。テーブルは、8台あって、しかし1台はグリーンの鉢植えが優先で使えないから実質7台。とにかく、空いている1台に座る。 奥、といっても、すぐそこ見えるところが厨房で、入口の上には神棚とダルマ。なかでは男性一人と女性二人がめまぐるしく忙しそうにしている。たぶん、近所で工事があって、ふだんはそれほど混まないだろう昼食時間帯が、今日は大繁盛でテンテコ舞いなのだろというかんじ。 ゆっくりメニューをながめると、ラーメンが400円。500円以下のラーメンを見るのは久しぶりだ。麺類ずらっとほとんど500円台。続いて定食、納豆定食500円、豆腐定食500円が安いところで、平均650円ぐらいか。ほかに、チャーハンやカレーライスに丼もの。単品に、もつ煮、もやしいため、野菜いため、焼魚、それぞれ400円。シュウマイ400円、餃子300円、ライス250円、みそ汁100円。ビール600円。などなど。 カツ丼を食べたかったのでカツ丼750円、愛人はカレーライス550円、それとビールね。仕事中のガテンのおにいさんの前でビール飲むのスマンが、ま、カンベンしてよ。グビグビッ。壁に飾ってある調理師の証書を見ると、ご主人はおれより一歳上だ、なるほど同年代に見える。昭和40年1965年の交付だから、そのころ食堂を始めたのかも知れないな。その前は、餅屋だんご屋とかで……とか考える。 おおっ、このカレーライス、まさにカレー粉のにおいそのままの黄色いカレーライスじゃないか。しかし、むむっ、ジャガイモが入っていない、たっぷりのざく切りのタマネギと豚肉だ。これは、おそらく、それを炒めて、そこにスープを加えるか、スープにその炒めたのを入れて、さっと煮てカレー粉と小麦粉を加えたやつだな。つまり煮込んでないやつだ。めずらしいなあ。強いていえば、中華鍋でつくる中国料理風とでもいうか。そういえば、こういう作り方があったの、すっかり忘れていたよ。と、写真をパチリ。 アレコレ飲んで食べているうちにガテンのにいさんたちは、次々に席を立つ。午後の部の仕事の始まりだ。勘定をしている。ほとんどは、定食と麺を食べているから1000円を超える。ガツンとくっているねえ、大衆食堂にとっては、いいお客さんだ。しかし、おなじガテンでも、まだ童顔が残る2人は、600円ぐらいの麺だけ。まだ作業服もどことなく身についていない見習い風で、それとも春休みのアルバイトの手伝いか?でも春休みは終っているか? とにかく日当が違うだろうからなあ。財布から大事そうに千円札を出して払っていた。 帰りに、草もちを買って、駅の向こうの桜でも見ながら食べようかと話していたが、そのあいだに来たおばさんが全部買って行ってしまった。 深谷の街を歩く。むかしの光いまいずこ、という風情だが、古い石造りの家やレンガの煙突の酒蔵が、旧中仙道沿いにポツポツある。町中に、こんなに酒蔵があるなんて、飲兵衛にとってはうれしいことだろうが、没落の風情や哀れ。だが、こういう町だから伊勢屋のような建物の食堂が残っているのだろう。没落は別の目で見れば深い息の長い継続だ。 やっと生き延びているような酒蔵の一軒、藤橋藤三郎商店で「東白菊」の新酒を1本買い、ご主人と立ち話。「日本酒は、いま元気がないですから、このむこうの○○さんは、やめてしまったし」「いやいや、そうおっしゃらずに、応援してますから」……それらのことは、またそのうち、写真と共に掲載しよう。 深谷駅は、深谷が東京駅舎のレンガの産地だということ、その東京駅舎が姿を消すということもあって、ここに複製が出現。テーマパークのようで、なんだか駅にいるのがハズカシイ。うらぶれた町にそびえる城郭のようでもあるが。写真を撮っている位置に、渋沢栄一の銅像がある。ばあさんが3人で「渋沢栄一なんか深谷のためには、なにもしてくれなかった」「東京で出世しても、地元には冷たい」とかいう話をしていて、ほほえましかった。 前回4月4日は、このように、ここに書いた、そのまま残しておく。 JR上越線深谷駅近くの西島町の一角。そそられる佇まいの伊勢屋食堂。入口ののれんには、「だんご」の文字が。むかしから、うどんやまんじゅうやだんごの、粉食が盛んな土地柄だからだろうか。 ザ大衆食トップ│ヨッ大衆食堂│大衆食的 |