03年末蔵出し写真展‐2
(03年12月8日版)

前回の続き、小鹿野町藤倉である。クリの収穫期だから秋である。険しい岩の山地なので、水田は、まったくない。しかし、昭和30年代ぐらいまでは、「自給自足という生活でありました」と住人はいう。醤油も自家製の絞ったもの、豆腐も自家製……というぐあいだったとか。



とくにイモ類は、クマやイノシシにやられてしまうから、このように畑の一角を囲ってつくる。それでも、大きなイノシシが突撃したら、防ぎきれない。しかし、こういう状態になったのは、おれの記憶では5年ぐらい前からではないかと思う。その前は、クマやイノシシがいないわけじゃなかったが、それほど被害はなかった。とくにイノシシは、子供をたくさん産むから、それにこのへんは鉄砲撃ちもいないし、禁猟区なので、どんどん増えるのだ。一方、人間は減るだけ。ま、人間が入植したころの、大昔の自然にもどりつつあるということであろうか。



畑には、クリの木やユズの木など、いろいろな実のなる木が植えてある。クリは熟して食べごろになると、クマ様か人間様か、どちらが先に、その一番良い食べごろをとるかのタイミングの競走になる。この写真の木は、3年前ぐらいにクマに、トコトンやられた。クマは、実のある全ての枝を折って食べるから、このように枯れてしまったのだ。

下のバス道路からも見える位置にある木だが、そこまでクマは出てくる。もっとも、ここより里に近いところで、人間様の庭のクリの木を堂々とって食べるのであるが。しかし、まだ猿が出ないだけマシだそうである。この山と連なる南のほう数十キロのところまで、猿が出没するようになって、いつそれがこっちに来るか心配だそうだ。



クリの木は何本もあるから、人間様が収穫したものは、もちろん人間様が食べる。山のクリは、畑に植えてあっても、ほったらかしの山のクリである。シブがしっかりついているから、それをキレイに落とす、というか皮をむくようにして落とす作業が、とても大変だ。ま、もちろん、そのぶん味はよいのだが。しかし、クマのやろうは、そのシブごと食べているわけだが、どういう味覚なのだろうか。



シブをむいたクリは、すぐ食べるのは当然だ。まずはそのまま蒸して食べる。ほかにアンにして、まんじゅうをつくる、まんじゅうはキビを入れたキビまんじゅうで、クリのアンとあう。キビは、むかしは自家栽培だったが、いまではワザワザ買ってくる。うめえ。

クリは一度に食べきれないから、保存される。昔は乾燥保存つまりカチグリだったが、いまでは冷凍冷蔵庫のおかげで、冷凍保存である。「エコロジー」的には、冷凍冷蔵庫があるような生活になったおかげで、クマやイノシシがはびこるようになったといわれるかも知れないが、冷凍冷蔵庫のおかげで食べるのが助かっているのだから、「エコロジー」ってのはムズカシイ。しかし、まあ、それでも、この食事は、じつに素朴で、人間、これでいいのであるとも思う。でも、ちゃんと手前にビールがあります。

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