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2007/08/12
食堂、市場、横丁…青森駅前は刺激ビンビンなのだ、と書きたいのだが


青森駅前 新町通り
おさない食堂

青森市新町1-1-17

(07年9月16日掲載)

7月29日(日)、この日は「四月と十月」古墳部東北縄文の旅最後の日で、午前中に三内丸山遺跡を見たあと、北海道から参加のイナムラさんとのお別れ昼食会をやることになっていた。場所は青森駅そばにあるアウガの食堂を予定していたが、日曜日のお昼どきのためか、道路は混雑のうえアウガに着いてみると駐車もままならない。駅周辺のほかを探すことにした。

アウガは青森駅前再開発ビルの愛称で、9階建てぐらいの、あまり大きなビルのない青森駅前では、屈指のビルだ。

この位置には、かつて市場があった。そもそも青森駅前は、戦後の闇市のあとが多く残っているのだが、アウガは東京でいえば新橋ビルのように、地下1階にそれを吸収したのだ。いまは「新鮮市場」という名で、そこにおさまっている。個性も根性もない名だな。でも、ここはすごくおもしろい。駅前にこうした市場があるって、いいなあと思った。

おれは、1980年ごろ、アウガの場所にあったコキタナイとてもよい風情の路地が交差する横丁の市場をウロウロしたことがある。アウガをのぞけば、周辺の市場は、まだゆっくりとした変化だ(下の画像)。けっこう広範囲に、市場と小売店がつながっている。このへんも、路地裏に屋台のような食堂があったり、おもしろい。撮影してきたから、そのうち掲載したい。








とにかく、その青森駅前の新町通り、アウガの前、交差点の角に、おさない食堂を発見した。12時をすぎて、もうイナムラさんが乗る13時すぎの列車の時間も迫っているので、ここに入ることにした。

目抜きのアーケード商店街で一番にぎわっているあたりだ。観光客相手かと思ったが、周囲も含め、そのような商売の雰囲気はない。気どった店構えではないし、入る前、ショーウインドーを見ると、魚貝の定食や料理を打ち出しながらも、しょうが焼き定食などの大衆食堂メニューが揃っている。市場の前だから、もしかすると市場の人たちも利用する食堂かもしれないと思った。

入ると、なかは奥に長く、壁に短冊のメニュー書きがはってあり、おばちゃんも、雰囲気は大衆食堂だった。やっぱり、大衆食堂は、おばちゃんだよね。建物は、むかしの大衆食堂の風情はないが、メニューは充実しているし、なかなかよい感じだった。朝7時から営業だから、やはり市場の関係者の利用もあるのだろう。

地元のひとがほとんどで、旅行者はおれたちだけのようだった。ちょうど食べ終わって出て行くひとがいて、人数分のテーブルを確保できた。総勢11名だったかな?隣接した3台のテーブルにわかれて座った。

最初の八戸から3泊4日目、魚貝の食べ続けで、もういいかげん洋食系というか肉気が食べたいからとカレーライスやしょうが焼きを頼むひともいた。一方、いやせっかく青森にいるのだから最後まで魚貝を食べようというひともいた。

人間は、飽きる動物なのだ。それに従う味覚がある。また、せっかくだから、この土地のものを、という観念に従う味覚もある。どちらも望むものを食べたあとは、よほどおかしなものを食べないかぎり、「ああ、うまかった」ということになる。味覚は、そういうものなのだなあ。絶対なものじゃない。ま、なんにせよ絶対的なものは情報的につくられているにすぎない。そして絶対的なものを求めるひともいる。それは、ある種、食にあらわれた権威志向権力志向とでもいうべきか。

それはともかく、こういうふうに、あれも食べたい、これも食べたいというときには、なんでもありの大衆食堂は都合がよい。おれは後者の「ナマモノ派」の立場で選ぶことにした。

メニューを見ていると「しゃこちゃん丼」というのがあった。なんだかわからないので、おばちゃんに聞くと、ウニとイクラとホタテがのっている丼だというので、それに決めた。値段を忘れたのだが、1500円だったような気がする(Web検索で調べたら1500円もあり、1000円もある。とにかくこれより高いということはなかった)。この旅の経験では、高額系三品がのっているにしては、そんなに高くない印象だった。でも中身をみるまでは、わからない。

出てきたのを見て、オッこれならとくに観光地値段ということでもないかなと思った。やはり市場の前ということが関係するか。とくにホタテは、おれのウチの周辺のスーパーなどにあるものより、はるかに大きく肉厚だった。でも、ふだん食堂で、こんな高額のものは食べない。貧乏大衆の控えめな観光食だ。

画像は、例によって食い意地がはっているため、撮影を忘れて食べ始めてから気がついて撮った。まだこれだけ残っていてよかった。

その割にはゼイタクを言うようだが、いささか飽きた味だった。ホタテはとくに、「化学的」にいえば、アミノ酸味が強いというか濃い。ようするに旨味が濃厚なのだ。いいダシがでるわけだ。それが舌の上に、いつまでも残る。そうなると、確かにカレーライスでも食べたくなる。

そうそうカレーライスやしょうが焼きを頼んだひとたちは、やはり「うまい」と言っていた。

おさない食堂は、もとは長内食堂と書き、はっきりしないが50年前か60年前からここでやっているとのことだ。戦後の歴史を抱えた、まさに大衆食堂なのだ。

ところで「しゃこちゃん丼」の「しゃこちゃん」だが、このときは気がつかなかったが、われわれ古墳部が、その前日に見学した、木造町の亀ヶ岡遺跡で出土した、遮光器土偶の愛称なのだ。「遮光器」の「しゃこう」をもじったものらしい。センスを疑うし、そういう観光宣伝だけ熱心で、この亀ヶ岡遺跡は、まったくヒドイものだった。この「しゃこちゃん」を模したデカイ像が看板がわりにあるだけ(左の画像)。出土品を展示するところは、わかりにくい場所にあって、標識もちゃんとしてない。展示も、ケースにテキトウにならべてあるだけ。受付のおばさんは、とてもよい親切な方だったが。

そもそも、その土偶は、あまりに優れた貴重なもので、東京の国立博物館がかっさらってしまい、現地にはレプリカしかないのだ。とらぬたぬきの皮算用の「しゃこちゃん」商売だけが突出している印象だった。

それにしても、青森県の日本海沿岸に近いところにある亀ヶ岡遺跡の「しゃこちゃん」が、なぜ青森駅前の食堂の丼物の名前になっているのだろうか。もしかしたら1980年代の青函博覧会かなにかのときのシンボルにつかわれ、なんでもかんでも「しゃこちゃん」商品が開発された名残りなのかもしれない。

ご参考までに。
アウガのホームページ…
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『ウィキペディア』 亀ヶ岡石器時代遺跡…クリック地獄


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