京都の大衆食堂<祭>は
大衆食堂だった


京都も京都駅南側の九条通りあたりへ行くと四条あたりとはだいぶ様子がちがう。通りをうろついている観光客は、ほとんどみかけない。そして「いまくまの商店街」は東京でいえば下町の風情、ま、ダウンタウンの風情だね。なぜか貧乏が趣味のおれは、ほっとして、薄汚れた日常的な人ごみに混じりふらふら小商いの店に入っていきそうになる。

いまくまの商店街の定食屋「祭」

そこで<祭>という一膳飯屋を見つけて、かなりボロでそそられるし腹は減っていたし、躊躇なく入った。Kさんがオススメの御寺(みでら)とよばれる価値ある泉涌寺を観光してプラプラ歩き、その商店街に着いたのは2時ごろだったろう。

入口まわりには雑然と「おふくろの味」「おでん」「定食」「日替わり定食 煮魚 煮物 煮魚 ゴマあえ 酢物 サラダ ごはん 味噌汁 漬物 6品で850円」「焼きそば650円 焼きめし650円 オムライス650円 とんかつ定食850円」などと。

10人弱のカウンターだけ。風邪をひいたか病もち風の、やつれた元気のない労務者風の男が一人、サケの切れ身の焼いたのなどでビールを飲んでいた。カウンターのなかには、ガハハの感じのおばさんと手伝いのおばさん。ガハハおばさんは、やはり東京の下町で見かけるような気さくさ。

日替わり定食850円は安くはないなと思いながらたのむ。メインディッシュの魚は煮魚か焼き魚を選択、サバ焼をえらんだ。そのほかにおでんやらゴマあえやら、どどどどど。これなら、まあいいかの気分。ビールをたのむ。

ガハハおばさんは男とガハハガハハと話をしていた。そして男が帰ると、手伝いおばさんに「あのひと、ちっとも食べないよ、食べないと身体よくならないのに、ほらこんなに残して」といいながらあとを片付けた。

こういうところは、とくに「京都の味」というものではない、いうならば働く庶民の味といったところか、料理もちゃんと濃い色しているし、うす味なんかではない。ついつい、めしをおかわりした。茶碗のめしだから、おかわりしたのに、おかわり100円をしっかりとられた。ガハハおばさん、しっかりしている。

「ごちそうさま」と出ようとすると「今年はあまりいいことなかったけど、来年はきっといいことあるよ、がんばろうね、気をつけてお帰り、がははは」。いいなあ、やっぱり大衆食堂だ。

(03年1月12日記、<祭>に入ったのは12月29日)

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