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北海道旅の情報誌『THE JRHokkaido』3月号「特集 ビバ!大衆食堂」


(09年3月29日掲載)

ブログ版2009/02/26「北海道の「ビバ!大衆食堂」。」に、下記のように紹介したまま、忙しくてそのままになってしまった。もう少し詳しく、掲載店なども紹介しておこう。


すっかり忘れていたが、3月1日発行のJR北海道の車内広報誌『THE JR Hokkaido』3月号が届いた。特集は「ビバ!大衆食堂」だ。おれは書いてないが、ちょっと協力させてもらった。

いつごろだったかな?ライターの北村かず子さんからメールをいただいた。すれっからしのライターや編集者にはない、ピンと共鳴するところがあったので、メールのやりとりのあと、電話をいただき話したりもした。

素晴らしい内容だ。どうです、この写真。どこの土地にも、その土地の魅力を語り伝える大衆食堂がある。

おれの『大衆食堂の研究』から2か所引用がある。大衆食堂に対しては、グルメやレトロなど、いろいろな興味の持ち方があるけど、おれとしては一番うれしいところを引用していただいている。発行から10年以上たって、しかも流行に流されやすい飲食の分野で、このように引用されるのは、著者としては光栄だ。

なのでうれしくて、とりあえず画像を掲載する。北村さん、ありがとう。



全体は、特集タイトルと三つの見開きで構成されている。最初の見開きには、「腹ペコ救済母の味」の見出し。

まず小樽のはれるや食堂=小樽市稲穂1丁目11-1、が登場する。この食堂、なぜか見覚えがある。入ったことはないが、小樽へは何度か行っているので、この前を通ったのかも知れない。特集扉の写真に登場の店主、小島久子さん(74歳)の店だ。「生まれたのは美唄炭山。十八歳の冬、一人で小樽へ出稼ぎに来て、それから市場の惣菜屋で二十五年働きました」という話がある。

つぎ、「"めきしこ定食"なる謎のメニューがあるのは、札幌のきよみや食堂=札幌市北区北23条西10丁目1-3。「めきしこ定食」なるもの、じつは、「実にオーソドックスなメンチカツであった」。名前は、「先代が肉屋さんに相談してインパクトのある名前をつけてもらったと聞いてます」、店名がひらがなだから名前もひらがな。「シャレであった、すべてが戯れであった」と愉しい。

この見開きの最後に、拙著『大衆食堂の研究』から引用がある。

「『大衆食堂の研究』(三一書房)の著者、遠藤哲夫さんによると、大衆食堂の経営は厳しく、小さな店は減る傾向にあるが、愛好家は増えているそうだ。遠藤さんは著書に「食堂は男の世界だ、それゆえ人間の世界である。人間になりたい女は食堂にゆけ」などと、女性にとっては聞き捨てならないことも書いている。だが、「オトナたちは必ず子供たちに食堂をすすめよ。それがただひとつの、生きているうちにいいことしたな、になる」には納得だ。大衆食堂には大事なものが隠されている気がする。」

第二見開きは、「夫婦で紡ぐ、時の糸」の見出し。滝川市栄町3丁目8-19、同じ番地同じ屋根の下に「「静のや」と「一福」という並び合う二軒の店がある」。静のやの店主は久光昇子(のりこ)さん。「小上がりの壁には、定食からお好み焼きまで夥しい数のメニューが。「お客さんが食べたいというものを作っていたら増えちゃったの」」。「「静のや」は昇子さんの夫・孝雄さんの母が駅前食堂として一九三八年(昭和十三)に開業」「実は孝雄さんも料理人。定年後、隣の「一福」の店主になった」というわけだ。

十八番食堂=函館市松川町10-11、1963年(昭和三十八)開業。酢谷恵理子(すやえりこ)さんは、夫の和行さんと店を守ってきた。「開業当初からの看板メニューが焼きそば。しょうゆ味ベースで、ハクサイにふんわりと卵が絡んでいる。おいしい。何なんだ、このやさしさは。その謎は中華飯で解けた」。材料費が高くつくだろう焼きそばだが、店主は言う「昔のお客さんが、懐かしがって食べてくれるものだから、変えたくない。それにうちは、体を使って働く人の店だから」。

第三見開きは、「食堂は、幸せを作る仕事」の見出し。最初に登場するのは、たつみ食堂(東川本店)=函館市東川町6-1。北村さんは書く「自慢じゃないが筆者はそこそこ大食いである。二十代では開店寿司三十皿を食べて地元タウン誌に載り、三十代では盛岡のわんこそば八十九杯で表彰状をもらった」その筆者も、ここの「ミックスフライ定食には平伏だ」と。「店主の山田征勝(まさかつ)さんを中心とした家族経営の「たつみ食堂」は、昨年四月四日に連続五千日営業を達成し、更新中だ」。

「さて、最後にご紹介する」小樽の青塚食堂=小樽市祝津3丁目210。「外国からのお客様を乗せた観光バスが日に何台もやって来る、少々、異色の大衆食堂だ」。祝津漁港のまん前にあって、本間準子さんが総勢十人以上のスタッフを指揮する。昭和45年から焼き続けているという、年季の入ったニシン焼き定食、見ているだけでヨダレが出てくる。

そして、この特集の最後は、このように終わる。「遠藤さんは「独自の生き方を覚えるために、食堂に授業料を払え」と愛情を込めて語る。働くこと、生きることとは何かを示してくれる北の大衆食堂、バンザイ!」

その土地その食堂ならではのエピソードが満載、個性が愉しく生き生き伝わる特集だ。たくましく働き生きる姿が素晴らしい。

『THE JRHokkaido』(発行=竃k海道ジェイ・アール・エージェンシー)

南の北九州の大衆食堂もよかったが、北海道の大衆食堂もいいねえ。行きたくなるねえ。日本全国、まだまだいい大衆食堂がある。


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