わさび

(05年4月19日版)

去る13日、埼玉県は秩父郡の山奥、小鹿野町藤倉で、わさびを食べた。野生のわさびをとって、熱湯をかける。のち冷水をかける。すぐ食べてもよいが、冷蔵庫で冷したほうがうまい。きざんで醤油をかけて食べる。シャキッとした歯ざわり、噛むとわさびの辛さが口に広がる。といっても涙が出るほどじゃない。フワ〜とした辛さのなかにピリッというかんじ。グビッと、ビールを飲むもよし、清酒を飲むもよし。朝には、アズキとクリのおこわと食べたら、これがまた相性がよかったねえ。



わさびは、ふつう清流の水辺に生えているのだが、ここのわさびは、水辺からちょいと離れた、コンクリートの川岸の中段に生えているのだ。これはまた、こんな景色は初めてだね。

写真下、ビデオの画像なのでわかりにくいが、左上が川の流れと川原、右下が川岸のコンクリートの中段で、木の根のむこうに密集して生えているのがわさび。小さな花をつけている。

このへんの水辺では、クレソンつまりセリも見かける。その場で清流でサッと洗って食べると、これがまた酒のつまみにいいのですな。

以前、もう15年ぐらい前か、ある山地でのことだ。源流帯とおもわれるあたりをウロウロしていたら、岩壁から水がゴンゴン湧き出して、流れをつくっているところへ出た。その水辺は一面クレソンである。これはスゴイ!と、途中で見かけた店まで引き返し缶ビールを買って来て、クレソンをつまみながら飲んだ。そのうまかったこと!

で、その帰り、知り合いの神主さんに会ったので、その話をした。あんなに生えているのに、誰も食べないんですか、と聞くと、神主さんは、ちょっと困った顔をして、「あれは朝鮮セリといって、このへんのひとは誰も食べないんですわ」と言ったのだ。食べないにしても、ワザワザ「朝鮮セリ」と呼んで食べないというあたりに、ただならぬ複雑な歴史と民俗の関係をチクとかんじたのだった。

山菜は、地域がかわると、摂食の様子がまったく変わる。フキノトウを食べない家や地域もあるようだし。たとえば群馬県と新潟県の県境でも、ちがいがあるようだ。なぜなのか調べると面白そうだが、やってらんない。

とにかく、住民の皆さんの貴重な食糧や収入源である山菜は、勝手にとらないように、おねがいしますよ。


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