ザ大衆食トップブログ版日記


大蔵食堂
山形県最上郡大蔵村

(10年6月1日掲載、9月21日更新)

えっ、こんなところに、こんなデカイ食堂が、なぜ、と思った。

きょねんの7月16日17日、「日本で最も美しい村」連合の取材で、山形県最上郡大蔵村を訪ねたときのことだ。

大蔵村は南から北に長い村で、大部分は山地。北部の、最上川の蛇行がつくったわずかな平地に、役場など村の中心部がある。商店街といえるほどのものはないのだが、それらしい一角はある。そのはずれに、まわりからは抜きん出て威風堂々の、大蔵食堂はあった。

人口約4千人ほど人口密度17.8人/kuの過疎の村に、このように大きな食堂があるとは、大いにおどろきだった。幹線のロードサイドでもないし、まわりじゅう過疎の地域なのだ。なぜ、ここに、このようにあるのか、ありうるのか。よそ者は、すぐには理解しがたいことだった。

取材の2日目、11時チョイすぎだった。たっぷり食べた朝食から2時間ほどで、まだこなれきっていない腹だったが、つぎの取材まで時間があったので入った。

のれんをわけて入ったところは、のれんと同じぐらいの幅のコンクリートのたたきが、真っ直ぐズドンと裏に通っている。客席フロアーになりそうな広さだが、そうではない、通路なのだ。意表をつく広さ。その左が、厨房で、右が客席の座敷だった。

なんとなく、「大陸風」の和漢混交を感じさせるインテリア。改築前の写真も飾ってあって、それを見ても、とにかくデカイのが好き、という感じである。大ぐい推進の感じである。

広い座敷に、大きな座卓。なにもかも、大様にできている。














メニューの中心は、中華麺だった。得意料理なのだろう。

正確な記憶ではないのだが、ことしになってから、山形県は中華麺の消費量が日本一という報道があった。この過疎地帯で、これだけの建物の食堂になるには、広範囲の市場が必要ではないか。それなりに、中華麺が人気の店なのかも知れない。

それにしても、この雰囲気では、普通でも大盛りぐらいはありそうな気がして、まだ腹はそんなに空いていなかったから、おそる恐る味噌ラーメンを頼んだ。それに、ビール。

やっぱり、洗面器、を思わせる大盛りだった。しかし、ぜんぶ食べられた。建物はハッタリではなく、それなりの客を集める味覚の内容をともなっていた。

12時近くになると、つぎつぎ、ガッチリ食べそうな男たちが入ってきた。麺とライスを頼む人が多い。閑散とした街路からは想像つかない、厨房も広く、活気があった。



ローカルなカレンダーに、気分がぬるむ。鉄道のない大蔵村からは一番近い駅になる新庄駅前の「みずほ」のひめくりに、「エレガンス」とあるのに、さらに気分がゆるんだ。大様な空間に大様な時が流れていた。なにもかも印象に残る大らかさ、なのだ。



大蔵食堂がある村中心部の近くを流れる最上川の景色も、大らかでゆったりしていた。大蔵村の美しさの一つは、「大様」にあるのかも知れない。そういえば、人びとも、大らかであたたかかった。



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