多万里食堂 さいたま市大宮区大門町1-69 「昔ながらのラーメン」に関するウンチク （03年6月9日記） たしか、ここは有名な料理評論家・山本益博さんも何かの本でオススメだったような記憶がある。山本さんが何を食べたのか、その本に書いてあったような気がするが忘れた。とにかく、いま、ここが話題になるのは、「昔ながらのラーメン」らしいのだ。そして、それがウリなのか、入り口左側のスダレの手製メニューには、「昔ながらの多万里の　ラーメン　４８０円」とある。 「昔ながら」というが、昔のラーメンがわかっているひとが、どれだけいるのだろうか？　それに、いったい、いつごろからが「昔」なのか？　とか、突っ込むと嫌われるかな？ 「昔ながら」といいながら、１９７０年代ごろからこちら、大きくは３回ぐらい味を調整しているところは少なくないはずだ。しかし、この多万里のラーメンは、あるいは調整があったかも知れないが、かなり、まったく、昔のまんまという感じである。そうですなあ、遠い１９７０年代は、こういう味が多かったように思うが、でも７０年代から変化があったように思うし、ま、６０年代なら間違いないか、という感じである。 それが、おれには不思議なのだ。これでよいのなら、いったい、ラーメン・グルメは何を騒いできたのだね。でも、もちろん、全国何千軒を食い倒した「ラーメン通」なら、あるいは評価しないかも知れない。そうだとすると、それはそれで、このように長く続いた大衆味と、にわかグルメの何千軒食い倒した舌と、どちらを信じるかという問題がゴキブリ大発生するだろう。 それに不思議なのは、ここで「スープを飲み干した」というラーメン好きがいて、それを「うまい」という意味で言ったらしいから、やっぱり今日的ラーメン・グルメを疑わざるをえない。ここのラーメンは、あきらかに昔ながらのうまい味である、ゆえに、スープを飲み干すなんて、そんなことができるなんて。うまいラーメンはスープが飲めなくてはいけないという教条だとしたら、オカシイ。 ソーメンのような細い柔らかい麺に、濃い若干ニゴリがある甘辛いスープを絡めて、というより、その麺が濃い甘辛いスープを絡めて食べるによいわけだが、ズルズルと食べ、残ったスープにめしを入れて食べるといいのになあ、こんどはラーメン・ライスにしよなどと、スープに未練を残す。そこに、おれのような昔の人間は、うまい「昔ながらのラーメン」に出合った思いがするのだが。（この「甘辛い」という表現はおかしい、正確にいうと、スープは「しょっからい」のであり、ところがシナチクがこれこそ関東の伝統の味といっていいほど「甘辛く」、その味の印象が強くて、ここに「甘辛い」と書いてしまった。味覚的にはそんな感じだったので、そのままにしておく） ともあれ、ここは大衆食堂である。この食券売り場など、すがりついて撫で回したくなるほど、昔のまんまだ。そして、この一角にメニューがはってある以外、壁はじつに素っ気なくシンプルで、テーブルが約１５卓じつに素っ気なくシンプルに詰め込んである。これが、ミョーに落ち着けるのだ。 麺之部 ラーメン４８０円、塩ラーメン４８０円、塩バターラーメン５８０円、ワンタン５００円、ワンタンメン６００円、タンメン６００円、メンマラーメン５８０円、ワカメラーメン５８０円、もやしラーメン６００円、焼そば６００円、味噌ラーメン６５０円、五目ラーメン７００円、チャンポンメン７００円、揚焼そば７００円、チャーシューメン７５０円、チャーシューワンタンメン８００円 飯之部 御飯（ライス）２００円、餃子３７０円、カレーライス５５０円、チャーハン６００円、玉子丼５００円、親子丼７００円、かつ丼７５０円、野菜炒め５５０円、餃子定食５７０円、野菜イタメ定食７５０円 ああ、「之」だって！　うれしいね。 こうやって見ていくと、おれは上京したころ６０年代前半によく利用した、街角の大衆中華食堂を思い出す。麺類と丼モノ、カレーライスに、定食らしきものは野菜炒めライスと餃子ライスというパターンが標準だった。あのころの丼モノの味まで髣髴フツフツと、ラーメンの味からすれば、およそ想像がつく。 山本益博さんはオリコウだと思う。もちろんバカじゃ、ああはなれない。高級店の選択については、いろいろ議論があるようだが、こういう大衆店の選択については、「無難」という言い方はおかしいが、ようするにアキのこない大衆味の店を選ぶ、押さえどこがたしかな選択眼があるように思う。にくいね。 多万里は、大宮駅東口の真ん前にある、たくましい大宮の顔、大衆酒場にして大衆食堂の「いづみや本店」の右側の路地を入って１分ぐらい。大宮高島屋の真裏にある。この路地を入るときから胸がときめく。 「いづみや」については、当サイトでは、氷式木製冷蔵庫を紹介しているが、そのうちガツンと特集を組むつもりだ。 大衆食的│大衆食堂系一覧│ヨッ大衆食堂