みたび揚羽屋へ ああ、よかったよかった、よかったなあ (2003年6月29日記) ウッ、もう1ヵ月以上たってしまったが、去る5月14日火曜日、みたび小諸の揚羽屋を訪れたのだった。どうもこの新緑の季節になると、ウズウズウズ、揚羽屋と高峰温泉をセットでやりたくなってしまう。どうも悪いクセになりそうだ。 ふりかえってみると初回は、2000年8月17日木曜日の訪問だった。この日、木曜日は揚羽屋の休日だが夏休み中のことで営業していた。小諸に着いて11時ごろ開店早々の揚羽屋に入り、軽く飲みながらめしくって、12時半ごろのバスで標高2千メートルの高峰温泉へ。高原の散歩と温泉、軽く飲んで、3時過ぎのバスで小諸にもどり、またもや揚羽屋へ。初めての亀の海を、シコタマ飲んで日帰り。2回目は去年02年6月30日。ゴーカにも、前日は高峰温泉に泊まったもどりで、またシコタマ亀の海を飲んで帰った。ああ、もちろん、一ぜんめし定食も賞味しておりまする。 今回3度目は、またもやゴーカ高峰温泉泊まりであったが、小諸に着いたらまず揚羽屋へ行き、高峰温泉行きのバスの時間まで過ごすことにした。2日目の天気がよかったら池の平湿原歩きをやろうという予定であり、帰りがどうなるかわからなかったからだ。(右の写真は高峰温泉から徒歩約1時間の池の平湿原) ついでにいえば、高峰温泉を往復するバスは小諸から「からまつの林を出でて からまつの林に入りぬ」と北原白秋「落葉松」的風景のなかをタップリ走り抜けるが、新緑の季節は「さびしかりけり」とは違って、じつに晴れ晴れさわやかで元気がモリモリするのだ。そして高峰温泉は高山植物に野鳥の標高2千メートルの高原に山小屋風簡素な温泉宿、ま、近くに小さなスキー場施設があるが一軒宿だから、白馬八方や蓼科や八ヶ岳周辺そして軽井沢のように俗化しているわけではなく、静かな落ち着いた雰囲気である。 それだけでもいうことないのだが、そこに揚羽屋が加わることによって、これはもう東京近郊では歴史的自然的文化的生理的経済的あらゆる面で、ちょっと得がたいコストパフォーマンスのよい高満足のコースになる。ま、おれの場合は、揚羽屋で酒とめしをやりながら、亭主と言葉をかわすだけで満足するのだけど。 さて、それで、一ぜんめし定食と天ぷら定食を頼んだ。一ぜんめし定食はすでに食べたことがあるが、とにかくいままで天丼を食べている人が少なくないので、ひとつは天ぷらが気になり天ぷら定食にしたのだった。ああ、そうだ、同行の相方がいるからね。 もう一ぜんめし定食の話は前にしたからよいだろう。写真の一ぜんめし定食は、コイのあらい、おから、野沢菜漬、豆腐揚げなど一部であり、これで十分めしはくえるのだが、ゴーカにもまだほかに揚げ出し豆腐と味噌汁が出る。ま、これでほかにツマミを頼まなくても酒飲んでめしがくえる。で、も一つの天ぷら定食、これは写真を撮るの忘れた。なにしろいつでもどこでも、モノが出てくるとすぐガツガツ食べ始めちゃう習性でね。 さてそれで、まずはビールを飲んで、とうぜん亀の海をコップ酒でもらう。と、亭主が、いやまて、そうそう、この日の厨房には例の気になる涼しい眼の美女のほかに、その母親つまり亭主の妻、奥さんと断定したい人がいた。おお、そうか、よかった、あの若い美女が亭主の妻だなんてことはないだろうと思っていたが、でも世の中なにがあるかわからんから、もしかするともしかすると不安だったのだが、ま、よかったよかったで、その奥さんがハハンと納得の美人なのである。やるなあ、田舎の酒好きプレイボーイ風オヤジ、というふうにアレコレ高等な思索にふけりながら、ビールを飲み亀の海を飲みしていると、くわえタバコの似合う亭主が「こしあぶらの木の芽の天ぷらができるけど食べるけぇ、おいしいよ」という。 ナヌッ?こしあぶらの木の芽?ハテ木の芽といえば、おれはアケビの芽しか知らんが、ま、食べてみようじゃないか山菜の季節だ。で、出てきたのが、コレ。はじめて食べたが、帰ってWeb検索で調べたら、あちこちでけっこう食べられていたんだなあ、だけど知らなかったよ。山菜は地域によって、食べるものがまったくちがう。とにかく、苦味が少なく、香りも、全体的にやさしい味わいであった。 で、まあ、この時点で天ぷら定食のほかに、このこしあぶらの木の芽の天ぷらを食べているわけだが、さらに、亭主はいった。「桑の葉の天ぷらは、食べたことありますけぇ」「えっ、あれを食べるの?」ってわけで、サービスするから食べてみろというのでお言葉に甘える。なるほど、考えてみればカイコのやろうが食うのだから、人間サマが食べてもおかしくない。 桑の葉の若葉というより芽に近いかんじの天ぷらが出てきた。パリッというかんじでかむ、かむごとに口の中にひろがる甘味、まったくこれは苦味がない。「カイコのやろう、こんなにうまいもの食べていたのかあ」と亭主の顔を見て笑う。すると亭主いわく「このへんはカイコも食べていました」。ウゲッ。 てなぐあいに食べて飲んで、さあ、そろそろ勘定して出ないとバスの時間だ、ってところで、勘定をお願いしながら気になっていたことを亭主に訊く。「ご主人、インターネットやってます? 去年、ご主人からわたしのホームページのことを聞いてごらんになったという亀の海の若旦那からメールをもらったのですが」と。じつはおれは、この亭主がパソコンにむかう姿が想像できなかった、どう想像しても酒を飲んでいる姿しか浮かばないものね。 すると、すぐさま亭主は「あっ、エンテツさん?」というのだ。これには、おどろいた。「あっ、じゃぁやっぱインターネットやっているんですかぁ」と意外性をこめて聞き返すと、「いやいや」といいながら、このサイトのトップページと揚羽屋さんのページをカラーでプリントしたものを持ち出してきた。「うちに来るお客さんが、これを持ってきてくれたんだよ」 いやあ、驚きの感激でした。で、もう出なきゃならない時間になっていたのだが、亭主は新聞紙に包んだ貴重そうな内緒そうな一升瓶を持ち出し、「これは亀の海の秘酒だから」とおれのコップに一杯つぎ自分もコップに一杯つぎと、もうすっかり仕事はオワリで飲もうという体勢をとるのだった。 しかし、こちらもじっくり飲みたいのだが、そのバスを逃すと高峰温泉まで高額のタクシー代をかけなくてはいけなくなる、しかたないその一杯をそさくさと飲みながら、そさくさと亭主と話をし、後ろ髪ひかれる思いで揚羽屋をあとにしたのだった。こりゃまた、こんどは揚羽屋の近くに宿とって、じっくりと亭主と飲みたいものだ。 2日目はうまいぐあいに晴れたので山歩きをメ一杯やった。クタクタヨロヨロになり、揚羽屋も寄りたいと思っていた亀の海の蔵元・土屋酒造もパスし、駅で亀の海のカップ酒3個買って帰ってきたのだが、帰り着くやいなや、アッというまに飲んでしまった。 じつは、揚羽屋のとなりに前から気になっている一軒がある。それはもうアヤシイアヤシイたたずまいなのであり、どうも飲食店らしく見えるのだがよくわからなかった。今回は入り口があいていたので、よく見てきた、そこはもう激しくそそられるイカガワシイ食堂なのである。これは、ますます、小諸市内に1泊し、揚羽屋でタップリ飲んで、そして、この食堂にも行ってみねばなあ、と、それだけを考えてすごしている今日この頃なのであります。ああ、また行きたい行きたい。
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