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池波正太郎さんのお言葉

(2003年9月14日記)

人間の生活が、よっぽど高踏的だと思うことが間違いなんですよ。

人間はね、衣食住とそれからセックスが順調に満たされたら文句ないですよ。これはもう人間の最大の理想でね。ぜいたくということじゃなくて、貧乏でも。人間の生活なんて、もうそれに尽きる。


『私の歳月』(講談社文庫版)「人間はね、高踏的じゃないんだ」

池波正太郎さんは『食卓の情景』をはじめ食に関するエッセイをたくさん書いている。小説には食べものが季節や生活の情景をあらわす大道具小道具としてたくさん登場する。

で、まあ、つまるところ、この一言につきるでしょう。

『鬼平犯科帳の世界』(文春文庫版)では「書くこと」についても「やれ芸術でござい、なんでございと偉そうなことを言ってもね、自分で書いたもので金を貰って、それで暮らしているんですからね、これは商売なんですよ」といっている。

どうしてああも大上段なのかという料理人や高踏的なグルメは、A級だろうとB級だろうと池波さんの信奉者ファンにもゴロゴロいるし、グルメの世界は「究極」だの「精華」だのと高踏的な言葉にあふれ、いまや飲食は、池波正太郎さんがいうような普通に「順調」であることのほうが難しそうだ。

高踏的→広辞苑によれば「@世俗を離れて気高く身を保っているさま。Aひとりよがりで尊大なさま」。大辞林によれば「@世俗を超越して、孤高を保っているさま。Aひとりよがりで、おたかく構えているさま」



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