おでんの面白さ。
(2002年10月24日記)
おでんというのは面白い。そもそも、寒くなるとおでん、というのが面白い。夏だって、うまいのに。冬は夏の倍の売れゆきだそうだ。人間の舌は絶対ではなく、観念や諸条件に支配されやすいという証明だろう。
でも、なによりおでんが面白いのは、これほどそれぞれの好みや地域性や育ちが反映するものはないということだ。
たとえば、おでんは関西じゃ関東煮(かんとうだき)と呼ばれる、と、東京では常識になっているようだが、関西では必ずしもそうではない。
ある京都のネエチャンは、「ウチじゃおでんですよ、おでんなのであって関東煮とはちがう」という。つまり「京おでん」というのがあるのだと。それに「ウチのオトウチャンはコロが入ってないのはおでんじゃないと主張している」とも。そんなこといってもコロは手に入りにくくなったのに。
東海地方のやつは黒ハンペン入ってなきゃおでんじゃない、「良いダシが出るんだよね〜これが」などとぬかす。
鹿児島出身のアホ女は「おでんといえば。関東に来て初めて見た”ちくわぶ”。あの、小麦粉で固めたやつが好きな人多いよなぁ、私の周りの関東の人。煮込み過ぎて、崩れそうな所が一番美味しいんだとさ。ちなみに、私はあんまり好きくないけど」といい「生の牛筋をダシ代わりに入れて、とろとろになるまで煮込むと、汁にコクはでるし身も美味〜〜〜いい!!」などと。
スジといえば、関東じゃ魚のすりみだが、西日本じゃ牛のスジ、というぐあいにまったくちがう。ほかにも、おでんといっても田楽もあるし。
あと好みも入って、「大根」「卵とスジね」「厚揚げが肝心」「卵、糸こんにゃく、棒状のさつま揚げの芯にごぼうかイカが入っているやつ、んでもって袋」それぞれなのだ。
おでんの話は、個性さまざまな面白さで、「うまさ」が単純化画一化されないところにあるように思う。ほかの料理も、そのはずだが……。ラーメンなんかは「スープが飲める」「上品なうす味」がはびこり、かつてのような個性を失って、ツマランものになってきた。
おでんについて、ガツンガツン主張しあおうではないか。あなたの好きなおでんは?
が、しかし、おでんもツイに全国を食べ歩いたとかの「おでん研究家」なる権威だかオーソリティなるものが仕切るところとなり、大衆の思いつきや独創の成果が、学者ぶったプロ的杓子定規論理に組み込まれる。おでんよ、おまえも、もうダメか、やれやれ。
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