イワシの買い方買われ方

(2001年6月某日記、2002年5月7日改訂)

イワシは秋が旬だそうだけど、いまも安くてうまいからイワシを買おう。そう思って、スーパーの魚売り場のイワシの前に立った。

これまでイワシは、丸ごと数尾トレーに入って売っているのが、ふつうだった。ほかに天ぷらなどにつかうのだろう、ひらいたものもあるが、ほんのわずかだった。

そこへ、頭なし腸(はらわた)なしの丸ものを数尾トレーに入れたのが、かなりの比重を占めてのしあがってきた。今年は、これが、丸ごとのやつの3分の1はあるかんじなのだ。おれがよく買い物に行く、ここ埼玉県さいたま市JR京浜東北線北浦和駅周辺のスーパーでのことだが。

おれは、その売り場で、ずいぶん頭なし腸なしがふえたなああああ、とぼんやりしていた。おれは気づくと、スーパーのなかでぼんやりしていることが多い。ぼんやりしたふりして、哲学しているのである。

丸ごと4尾入りと頭なし腸なし3尾入りが、ほぼ同じ値段になるぐらいの勘定だ。同じカネで4尾か3尾かだ。非常に単純に、頭なし腸なしはバカ高につくことがわかる。そこを哲学する。

すると、20歳代後半とおもわれる夫婦がきて、妻のほうが、その頭なし腸なしの方をとって買い物かごに入れた。

すると、夫が、「こっちのほうが安いよ」と言って、丸ごとのほうを取り上げた。

すると、妻は、ニッコリ笑って、「だめよ、それはお部屋が臭くなるから」と言った。イワシの腸のニオイが問題なのだろう。

おれは哲学をやめて、頭なし腸なしを買っていた。その妻は、とても美しいひとだった。

マイワシ頭なし腸なし4尾入り、美人にこころうばわれ、298円。うむ。アホ。

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