街の食堂と生き方の問題

(2002年7月1日記)

『大衆食堂の研究』はいろいろな評をいただいたが、おれが共感を持って読んだ評に、つぎのようなものがある。

この本は題名だけ読むと、B級グルメガイドみたいだが、そんなチープの本ではない。街の中でオトナが正しく生きる為の書だ。私も食堂へと勇気を持って足を運び、正しくいかがわしいオトナになることを心に誓うのであった。

これは、『本の雑誌』1999年1月号の特集「読者が選んだベスト1」で『大衆食堂の研究』を選んでくれた読者の方が書いた一部である。

日々の食事をどこで食べるかは、生き方の問題と密接に関係するし、食堂の選び方は生き方の選び方でもある。これは、確かに『大衆食堂の研究』を書くときの視点であり、それはサブ・タイトルにもあるように「東京ジャンク・ライフ」の提案でもあった。そしてだから、大衆食堂を「いかがわしさ」で分類することをしたのである。

一年に何度も行かないような海外旅行のように「高級店」を選ぶときは、関係ない。ときたまそこで食べて、あるいは旅するように食べ歩いて、もどる場所、日々自分がいる場所は、どこか、なのである。

しかし、その一年に何度も行かないような「高級店」を選ぶ尺度を、日々の食事の場に持ち込もうという「B級グルメ」の方法が少なからず蔓延している。それは、あるいは、「自分がいる場所」を発見しえないか必要ないひとが増えている、ということなのかもしれない。

ま、とにかく、力強くめしをくい力強く生きよう、ってことさ。


メシゴト雑記事項索引