「グルメ」のウンチクがおかしいわけ

(2002年1月12日記)

飲食を楽しみ、うまいものを賞味するのは、もちろん悪いことではない。だが、とくに1980年代以降の「グルメ」たちや「うまいもの好き」のウンチクというのは、提供側つまりメーカーや店や生産者や料理人やなどの能書の受け売りがほとんどなのだ。

仲介役のライターやモノカキ、肩書はどうでもよいが、ほとんどは「職人」だの「プロ」だのというひとの代弁者にすぎない。ただただ「職人」や「プロ」の言うことに家来のように従い、庶民に印籠をかざすようにもったいつけ、美辞麗句をならべたてる。それを読者は「へへえ」とうのみにする。

これほど主体性のない文化もめずらしい。こんなところに、まっとうな「グルメ文化」が育つだろうか。「グルメ」というのは、消費の文化、生活の文化のはずであろう。料理を芸術のごとく扱うのはよいとして、それなら他の芸術のように、もっときちんとした鑑賞者の独自の文化つまり批評の精神をもつべきである。

食堂を評価する前に、自らの評価の方法や基準について、それでいいのか、深く考えるべきだろう。


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